【情報】動きだした孤立無業者 秋田・藤里町社協の挑戦/長野北部地震:余震、避難所の憂鬱 豪雪の村、「仮設は無理」/「白馬の奇跡」防災モデルに 住民連帯で死者ゼロ/「めど立たずつらい」 避難生活者、疲労の色濃く

11月後半の各地の新聞の中から、雪対策に関連する興味深い取組を要約してご紹介します。その他、長野県北部の地震に関連する記事や冬本番に備えて着々と準備が進められていることなどが報じられています。
 

◆秋田県_動きだした孤立無業者 秋田・藤里町社協の挑戦◆
 
人口3,600人、高齢化率4割を超える豪雪地帯である藤里町において、町社会福祉協議会では、2010年に就労訓練施設「こみっと」を開設、実際に仕事を体験できる場として、施設内に喫茶店のほかお年寄りらが集うサークル室、会議室なども備え、自立して生活する宿泊施設も敷地内に建設しました。
こみっとには現在、孤立無業だった住民約30人が登録しています。パソコン技術を学んだり、ヘルパー2級資格を取得できたり、そうした就労支援にとどまらず「お金が入り、やりがいが持てるよう仕掛けを用意した」といい、以下のような事業を行っています。

・買い物ツアー:買い物が不便なお年寄りを車で送迎、就労訓練に通う登録者が付き添い、買い物をサポート
・まいたけキッシュ:町特産のマイタケを使った軽食、JR秋田駅などで販売。町の名物に育てようと取り組む。手作り弁当の配食サービスも開始
・こみっとバンク:人材派遣組織、町内の農作業や店の手伝いなどアルバイト先を開拓し、登録者を派遣

これらの狙いを、当時町社協事務局長だった菊地まゆみ常務理事は「引きこもっていた若者らが集まれば、新しい産業をつくれる可能性がある。支援される側から、町に活気をもたらす存在になってほしい」と語っています。町社協では、こうした事業と並行して、孤立無業者への訪問やチラシ配布を根気強く続けた結果、こみっとに顔を出す人も徐々に増え、支援対象とした113人のうち、2年間で25人が就職を果たしています。その活動成果はいま、全国から注目を集めています。
(2014/11/18 河北新報)
 
 
◆長野北部地震:余震、避難所の憂鬱 豪雪の村、「仮設は無理」◆
 
 長野県北部を震源として22日夜に発生した地震で、最大の被害が出た白馬村の北側に隣接する小谷(おたり)村でも、家屋4棟が全壊するなど大きな被害が出ました。同村は谷川沿いの集落が多く、土砂崩れで損壊した住宅もあります。24日も余震が続き、被災者たちは避難所での不安な生活を強いられています。
 小谷村中土(なかつち)は、同村で全半壊した家屋の9割が集中しています。地面に亀裂が入り、谷の両脇の斜面には小規模な土砂崩れの跡があちらこちらに見えています。家屋裏の斜面の土砂が押し寄せ、全壊している住宅もあり、崩れかけた斜面では5、6本のスギが傾いていました。
 築100年を超える木造2階建ての家は半壊しました。この家に住む男性は、窓ガラスが割れ、内装ははがれ落ち、骨組みがゆがみ、隙間から外が見えており、家には戻れないのではないかと心配そうでした。
 谷川沿いの県道から脇道にそれ、約10分ほど歩いて登った所でも家がゆがみ、風呂場が壊れました。住人は「雪に耐えるため、太い柱を使って頑丈な家を建てたが、今回は耐えられなかった」と話しています。
 中土にある中通り公民館の避難所代表は「豪雪地帯だからプレハブの仮設住宅では生活は無理です。いつまで避難生活は続くのか」と不安げに話していました。
 県によると、小谷村の住宅被害は全壊4棟、半壊21棟。24日午後6時現在で161人が9カ所で避難生活を続けています。同4時現在で237世帯が断水。土砂崩れなどによる通行止めは国道148号や県・村道で計14カ所に上っています
(2014/11/25 毎日新聞)
 
 
◆長野地震1週間 「白馬の奇跡」防災モデルに 住民連帯で死者ゼロ◆
 
 長野県北部で最大震度6弱を観測した地震から、29日で1週間を迎えます。家屋倒壊の被害が出た同県白馬村では142人、小谷(おたり)村では84人が避難生活を続けています。
                   ◇
◎嫁入り道具「救出」
 白馬村では28日も、被災者らが損壊した自宅の片付けに追われていました。地震で大きく損壊した同村神城の堀之内地区の民宿「大わで荘」では、民宿の主人の妻の嫁入り道具であるたんすを10人がかりで建物の2階からロープで下ろしていました。
 震度5強という強い揺れに襲われた白馬村では40棟以上の家屋が全半壊しながら、住民らによる迅速な安否確認と救助活動が功を奏し、死者をゼロに抑えました。地域で築き上げた強い連帯感のたまものといえ、各地で巨大地震への備えが進められる中、「白馬の奇跡」から減災へのヒントを得ることができそうです。
 
◎強い絆
 36棟が全半壊した堀之内(ほりのうち)地区では、豪雪に耐える重い屋根が地面に崩れ落ち、路地をふさいでいる場所もいまだ多くあります。この地区に暮らす白馬村消防団団長は「死者がなかったのは奇跡だ。地域に濃密な人間関係があったからこそ」と話しています。
 白馬村は29の行政区に分かれていて、形は異なるものの、地区ごとに「区長」を頂点としたピラミッド型の住民組織が築かれています。86世帯203人の堀之内地区では、区長の下に10世帯ほどを束ねる8人の「組長」が、さらに各組長の下に補佐役として2人の「伍長(ごちょう)」がいます。災害時、伍長は受け持ち世帯の住民の安否を組長に伝え、組長が区長に伝える仕組みがあらかじめできていました。
 こうした住民組織が機能するには、日頃からの親密な近所交際が前提となる。倒壊家屋のどこを捜索すればよいのか消防団などに即座に伝えられ、スムーズな救助につながりました。
 
◎都市型
 7棟が全半壊した三日市場(みっかいちば)地区では5年ほど前から、高齢者の所在を地図に書き込み災害時に地区の誰が誰を支援するか事前に決めていました。県独自の防災対策の一環でしたが、住民がとっさの行動に迷うことなく1時間ほどで41世帯118人の安否を確認できました。
 住民の連携は工夫次第で各地でも生かすことができると指摘する専門家もいます。
 東京都内ではマンションをフロアごとに組分けし安否確認を行う都市型の住民組織づくりが進んでいて、近所交際が希薄な地域では、回覧板をポストに投函するのではなく、直接会って手渡すことから始めることも考えられます。
 被災から1週間。堀之内地区や三日市場地区では、避難を余儀なくされた住民らが集落を去り、今ある絆が綻(ほころ)ぶ懸念もあります。
 三日市場地区の区長は「地震のため、地区を出たいという声もある。住民が減ってしまえば、助け合うことすらできなくなる」と危機感をあらわにしていました。
(2014/11/29 産経新聞)
 
 
 
◆長野北部地震:1週間 「めど立たずつらい」 避難生活者、疲労の色濃く /長野◆
 
 県北部で最大震度6弱を記録した地震は、29日で発生から1週間を迎えました。約230人が避難所での生活を余儀なくされたままで、疲労が色濃くにじんでいます。一部地域では断水も続き、本格的な雪のシーズンを前に、被災した住宅やスキー産業への影響が懸念されます。
 家屋の倒壊など大きな被害が出た白馬村の堀之内地区。29日は雨の中、重機による解体作業が行われていました。「毎日が精いっぱい」。自宅が半壊した方は村の避難所で寝泊まりしながら、家の片付けに追われています。「将来が不安。家族と冗談でも言い合ってないとやっていられない」と苦笑いしていました。
 県によると、地震で住宅90棟以上が全半壊し、800棟以上が一部損壊。白馬村や小谷村などの一部地域は断水したままです。白馬村の蕨平地区に住む60代男性は毎日、軽トラックで公民館まで水を取りに行き、食器にラップを敷き、洗う水を節約しています。「水のありがたさを痛感した。元の生活に戻れるめどが立たないのがつらい」
 豪雪地帯の被災地。白馬岳など3000メートル近い山々は雪化粧し、冬の訪れを感じます。
 積雪で住宅被害が出ないか不安がる声もあり、道路崩落による孤立の恐れがあるとして避難指示を受け、避難所で暮らす男性は「雪が降ると外での作業は大変なので、早く戻って片付けがしたい」と焦りを募らせています。小谷村で温泉を営む方は、ボイラーなどが壊れ営業できなくなり、家の亀裂も日に日に大きくなっているといい、「毎年2メートルぐらいまで雪が積もる。このままだと危ない」と表情を曇らせていました。
 12月、スキー場は順次オープンします。スキー産業は地域経済の主軸であり、安全が確保され、通常通り営業できるとして、県や地元自治体、事業者は一体となって情報発信に力を入れる方針です。
(2014/11/30 毎日新聞)

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